* 北京胡同物語・雑踏は北京の味わい *


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<いざ、人混みのなかへ>

 以前にシーメトリーのことを書いた。北京は漢以来の王都建設の伝統的手法に則り、王城として相応しく造られた街である。厳粛に秩序正しく。鼓楼から景山へ、景山から故宮へ、故宮から天安門を経て正陽門へ。その荘厳とは、今なお、王城の気を漂わせる。
 同時に、北京という街は、それとはまったく逆な味わいも併せ持っている。雑踏……。人混み……。北京で、「人が混んでいる」、と言ったら本当に混んでいると思った方がよい。狭い道に人が溢れ返る。狭い間口の両側の店の売り子が声を涸らして叫ぶ。立ち止まって見ようにも、後ろから押してくる波がそれを許さない。しかも、右側通行でも左側通行でもない。波は後ろからばかり来るとは限らない。前からも、右からも左からも。自分の足と他人の足がもつれ合う。片と胸、胸と背が押し合う。誰もが好き勝手に進もうとする。でも、誰もが好き勝手には進めない。秩序も規則もあったもんじゃない。
 売り子と買い手の怒号のやりとり。赤ん坊の泣き声。年寄りの笑い声。汗の匂い。化粧の香り。トウモロコシをゆがく匂い。真上から照らす日の強さ。何もかにもが一緒になって、人の群れと混ざり合って波を造る。エライことだ。
 それでも、北の入口から入れば、自ずと、南の出口から吐き出されることになる。なかなかうまくできている。これも、一回り大きな秩序かなのか?
 ともかくも、波に揺られるのは心地よい。人の波に揉まれ、人の波に逆らい、人の波の一部になる。ああ、自分は北京に居るのだ、と思う。雑踏は北京の味わいだ。


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