* 北京胡同物語・胡同の夏 *


北京胡同物語メニュー 旅チャイナ・トップ 中国旅行大全・北京編 ホテル大全
レストラン大全 『雑踏に酔う』・試聴 三輪車胡同巡り 格安航空券

<「立秋」が過ぎて>

 立秋が過ぎる。三十四、五度の熱暑は、相変わらず、続いている。蝉の声は、相変わらず、やかましい。それでも、心なしか空気が青みを帯びてきたような気がする。暑さの中にも、何となく、風のそよぎを感じるようになる。

 日中、事務所のビルから外へ出る。風が顔に当たる。
「風が吹くようになってきたね……」
「風って、これ、熱風ですよ。こんなもの吹かない方がいいですよ」
 馬慶明さんが言う。
「それでも風じゃない」
「やけどしそうな風じゃないですか」
「やけどしようが溶けちゃおうが風は風。秋を感じるじゃない」
「暦から来る先入観ですよ。日本人は騙されやすいんだから……」
「感じやすい、って言って欲しいな……」
 暦を創ったのは中国人じゃない。騙す中国人が悪いのか、騙される日本人が馬鹿なのか。気が付くと、馬さんは立ち止まって空を見上げている。つられて見上げると、空がいつの間にやら青みを増し、そして高くなっている。ほうきで掃いたような雲が浮かんでいる。
「和田所長、秋がそこまで来ているんですね。やっぱり中国の暦は正しい」
 急に愛国主義に目覚めたらしい。
 そう。暦を意識するということは、きっと、騙されようとすることなのだ。暑さの中にしか立秋はない。その暑さのなかで、騙されようとする者が暦どおりの秋を発見できる。確かに、中国の暦はよくできている。


北京胡同物語メニュー 旅チャイナ・トップ 中国旅行大全・北京編 ホテル大全
レストラン大全 中国で本を出版 三輪車胡同巡り 格安航空券